私はひどく咳込みながらその場にうずくまりました。喉を押さえ、肺の空気をすべて吐き出して、それでも足りずにその場で嗚咽を漏らしました。
彼には元々精神薄弱の気があった。
しかし、私の口から語れる事は多くありません。あの時のことは、私の心を離さず絡めとりながら、その実まったく近づく事を許さないのです。
私は唾を飲み込んで彼女を見た。彼女と会うつもりはなかった。今となっては言い訳にもならない言葉が脳内を駆けめぐる。
手厚い看護のおかげか、私の体調は日を追うごとによくなってゆきました。
突然のことに目を見開いて、しかしどこか安心したような顔だった。
それきり、馴染みのない海はタイミング悪く突入したトンネルの向こうに消えていった。
文字数:33,802字(原稿用紙86枚)
2009年ごろ 最初期稿
2012年2月〜4月 リライト。現在の原型が完成
2013年6月〜7月 加筆修正
2014年1月 加筆修正版と差し替え