「ホーリーブルー」、読了ありがとうございました。

 今回はちょっと本文中では入れられなかった説明などもあるのでまとめてやります。

 ネタバレ・構造からのアプローチ・裏設定含みます。

 

 

この作品について

 「Kの水葬」の番外編。舞台は1980年代末から現代に移っている。タイトルがカタカナ+英文なのは現代感を出したかったから。

 本編と違ってホラー要素を含むのは、小説家になろうで企画されていた夏のホラー2015用に書いていたため。普通に間に合わなかった。

 基本構造は「暁を待つ(未筆)」と対になるように調整してある。「美化された思い出/現実の過去」にどう向き合うのか、という話である。作者としては、リハビリにしてはうまく書けたんじゃないかなあと思っている。

 ホラーは理不尽であるべきで、そして少しエロティックだともっと良い。幽霊は理解のできない存在で、怪奇現象にもったいぶった理由はいらない。これはそんなコンセプトの作品である。

 なお初稿ではロクでもないオチがついていた。真川の手のひらに注目してみよう。

 

瑠璃小灰

ルリシジミ

 タイトルにもなっている、作中でキーとなる小さな空色の蝶。ただホーリーブルーと言われてルリシジミに繋がる人はあまりいない気がする。

 この蝶を選んだ最大の理由は、それなりにポピュラーだからである。また(口に入るくらい)小さく可愛らしいイメージがあること、色が美しいことなども大きい。ここでウラギンシジミとかベニシジミとかキマダラルリツバメとかチョイスしてもアレだ。

 ルリシジミ、というくくりの中では特に伝説・伝承は見つけられなかったが、盆の蝶は死者の魂であるという。このネタを作品に生かせなかったのは少々心残りである。

 

舞台

 作者の実家周辺・母校がモデル。基本群馬。

 「テーマに関わらないから」と墓参りのシーンを削ったため、周辺地域の描写が減ってしまった。江戸時代の背の低い墓石に囲まれた、よく見る御影石の墓、というのが近所にある。同じ場所に立っている他の墓はごく普通のものなので、なかなか異様。

 Twitteに実家周辺の写真が一枚あがっているが、あの写真を撮っている最中ジーンズの上からヤブ蚊に三カ所食われた。

 

真川真理

まかわまこと

 一応名前は早い段階で決まっていた。出さないということも含めて。千沙の「まーさん」は名字ではなく名前から取っている。名前の由来は群馬出身の建築家。

 トラウマが原因で、自身に起きた異常を頑なに誤魔化したり隠そうとしたりするきらいがある。幼なじみ兼従妹の千沙は気づいている、兄は気づいているが静観している。

 芽理依のことを忘れられなかったために「メリー」に取り憑かれた。「思い出の中の美しい少女」のままである「メリー」を受け入れた節もある。

 この後、もし吹屋芽理依と会うことがあったとしても、彼女を初対面として扱うだろう。

 

割田千沙

わりたちさ

 高校生。

 真川からは「気が強い」と苦手意識を持たれているが、これは真川には強気に対応しないと反応が返ってこなかったからである。苦手意識も、気が強いからというよりは隠したいことを暴露されるからという理由の方が強い(無意識であるため真川本人は気づいていない)。

 真川をこちらに繋ぎ止めるほぼ唯一の存在だが、ここぞというところで強く出られず、行動は後手後手。最後のシーンの言葉を先に言えていたら、真川がメリーを受け入れることもなかった。

 

吹屋芽理依

ふきやめりい

 直接には過去の人としてのみ登場。初期プロットでは最後のシーンで再会する予定はあったが、予定は未定だった。

 前半では「美化された思い出」の存在であるため、あのセリフ以外の生臭さを極力排除した。悪い子ではないが、依存が激しい。家庭環境とちょろい真川がそれを助長した。

 あのシーンの前後はあくまで匂わせる程度に留めた。あくまで真川の記憶であるし、「家庭が完全に崩壊し、母親にさえ見捨てられて凶行に走った」という行動の理由を(どのタイミングであれ)書くのは興醒めだからである。シャツの糊とかで一応表しはしたが。

 現在は過去を忘れて普通に生きているらしい。ただ、そのうち追いつかれるのだろうと思われる。真川と違い、彼女は加害者側に回ったからだ。

 初期プロットだとルリシジミを食ったのは真川ではなくこっちだった。

 吹屋は群馬の地名から。

 

川崎

 わらしべ貧乏(47)。シリーズ本編においては狂言回しであり、シリーズを繋ぐ役割を持つ。

 伝奇物というくくりのこのシリーズにおいて「怪奇現象に遭遇させてもそれを怪奇現象として認識させない/怪奇現象だと川崎が判断するような大物に関わらせない」というめんどくさい縛りが設けられている。他のネタでは現実側から事件にアプローチする係だが、今回はトドメを刺すタイプのモブ。なお主人公補正はないので外場村あたりに放り込むと普通に死ぬ。

 自身も「都会からこの村に来た」という同じ境遇だったために、芽理依をよく気にかけていた。「真川くんだけは〜」は川崎の転勤にかかる。

 Kの水葬を書いてからしばらく時間が経っているのだが、いつの間にか昆虫に詳しくなり煙草をスパスパ吸い始めた。エコーは旧三級品に含まれる質の悪い煙草だが、独特の味わいから愛飲家も多い。なお作者が嗅いだことのある煙草の中で、喉に最もダメージを与えるうちの一つである。

 

 割田家のことや川崎の周辺に設定がある理由は、「暁を待つ」という未筆の短編が元にあるため。この地区出身の宮田、そして千沙の従姉妹である智聡が話の中心であるため色々と決まっていた。その設定を流用したかたちである。

 

 

「メリー」

 彼女については何を語っても無粋であるが。

 「糊が利いた」シャツと、虫の複眼のような瞳の少女。

 彼女が出現したキーとなるシーンは一応合わせてある。

 

 イメージイラストは完全に事案。またがっていた真川の足を二本から一本にしたらなんかもっとヤバくなった気がする。